ぬいぐるみを作るなら、素材はモヘアかフェイクファーか?
まず迷うポイントです。
私の肌感覚ですが、古典的なテディベアはモヘア、近代的動物のぬいぐるみはフェイクファーが使われるイメージです。
似ているようでぜんぜん違う2つの素材について、ネコのぬいぐるみ作家10年目の私が独断と偏見を交えながら考えてみました。
モヘアはタンパク質
ぬいぐるみ素材でモヘアとは、アンゴラ山羊の毛を平織の綿生地に織り込まれた生地のことです。
人間の髪の毛もですが、動物の毛は「ケラチン」というタンパク質です。
世界のどこか、おそらく乾燥地の草原で暮らしているアンゴラ山羊が
食べて、寝て、生活していく中で代謝物として出来た毛を人間が頂戴してモヘアを作っています。
そういった製造過程のためか、一般的に値段が高く高級素材と言われています。
モヘアを作ろうと思ったら、まず乾燥地の草原に引っ越してアンゴラ山羊を飼うことから始めないといけないんでちー!
それは大変でちー。高価なのも分かるでちよー!
織物素材としてのモヘアの歴史は古く、約5000年前(!)に遊牧民によってトルコへもたらされたとされています。
フェイクファーは化学製品
一方、フェイクファーは主にポリエステル繊維やアクリル繊維です。
工場で化学合成して作られます。1920年代ぐらいから研究開発されたそうで、日本で作られるようになったのは1930年代のようです。
大学で化学を学んでいた私としては人類が開発した素晴らしい技術だと思います。
この化学繊維おかげで、安くて質の良い服や製品が簡単に手に入る様になったわけですから!
近年では動物保護・環境保護の観点からもアクリルファーを含むフェイクファーを使うことがファッション業界のトレンドになっているんだとか・・・
工場でじゃんじゃん作って安く提供できるんでちよー
でもそれって本当に動物保護・環境保護になるの?カイリにはわからんでちー
反芻動物を飼育してリアルファーを採集することと、工場で大量に化学繊維を作ることのどちらが地球や動物に優しいのかについては比較が難しいように私は感じますが・・・
私(ぬいぐるみ作家)にとってのモヘアとフェイクファー
ぬいぐるみの素材としてモヘアを使うこととフェイクファーを使うことについて考えてみます。
私は創業以来ずっとモヘア一筋でやってきていますが、モヘアのいいところは
- 生物由来の温かみがある(動物のぬいぐるみを作る上でここ重要な気がします!)
- 歴史が長い
- 高級素材として安心の品質
- あまり伸びないから縫いやすい
- アンティークと相性が良い(歴史が古いから)
- 天然素材・自然と相性が良い(モヘアも天然素材だから)
一方良くない点については
- 毛量が少なくまばらなところがある
- 高い
- 手に入りづらい(大きな手芸店にもあまり置いてありません・・)
私はモヘア派なのですが、フェイクファーも実はずっと気になっています。
フェイクファーのいいところは
- 毛量が多く、本物の毛皮のようなのでより本物っぽくリアルに作れる。
- 安い
- 手に入りやすい
- 工場製品なので品質が均一
- 発色が良い
- 耐久性と耐水性がある
一方フェイクファーの弱点は
- 熱に弱い
- 歴史が浅いので100年以上経った時のぬいぐるみの状態については・・?
モヘアのテディベア(ぬいぐるみ)については今でも現役の生きた(?)証拠がありますので
大切にすれば100年以上持つと断言できます。
伊豆テディベアミュージアムにいる1904年生まれのテディガール
https://www.teddynet.co.jp/izu/collection/
100歳以上のテディベア、おばあちゃんよりお年寄りのテディベア、
実際に見に行きましたが、長老のような貫禄がありながらも優しい笑みでとても可愛らしく、人間のいいところも悪いところも全てを包んでくれそうな包容力を感じました。
もし、ご興味のある方はぜひ一度会いに行ってみてください。
まとめ
そもそもの話になりますが、モヘアのテディベアは欧米の文化であってあまり馴染みがないものです。
ここ日本においては戦後から近代にかけてフェイクファー製のふわふわなぬいぐるみが一般的です。
あと、日本では10数年前ぐらいに羊毛フェルトがブームになって、本物そっくりの羊毛フェルト製品が今でも大人気ですね!
そして最近はアートドールというアニメやゲームに登場しそうな可愛らしい動物を作る方が増えているように感じています。
ぬいぐるみ作りが新しい技術、新しいアイディアでどんどん盛り上がっていったらいいなと思っています。
私も使えそうな新技術は取り入れつつ、時代のニーズも汲んで行きたいなと思います。
ご意見ご感想、なんでも!コメント頂けたらうれしいでちー♪